「天気の子」ブームがだんだん冷めてきましたね。
他の記事で散々褒めておきながら、後から冷静に考えてみると…
正直、あまり面白くなかった。
今のところ、2019年で一番面白い映画は「HELLO WORLD」で間違いなさそうです。
徹底的に練られた隙のないストーリー、2027Soundが織りなす壮大な音楽群、京都を舞台としたことで生み出されたハーモニー、どこをとっても間違いなく神作です。
今回は、HELLO WORLDではなく、「天気の子」と、かの名作「君の名は。」を天秤にかけ、「君の名は。」が優れている理由、そして「天気の子」があんまりだった理由を書いていきます。
※ネタバレを盛大に含みます。
※「天気の子」が面白くて仕方ない!という方はブラウザバックを推奨します。
※あくまで個人的見解なので、気にしないで下さい。
【この記事の目次】
物語の軸が弱い
天気の子は、どうにも中途半端な印象を受けます。
その印象を形作っている要素の一つが、軸の弱さでしょう。
「君の名は。」は、序盤こそただの入れ替わりを見せられているだけでしたが、中盤以降は、「二人が出会う」ための映画となっています。
三葉と瀧が時間を超えて出会う、その過程を私たちは見たいわけで、「君の名は。」は、それをうまく見せることに成功していました。
「天気の子」でも、「陽菜を救う」ことがテーマになっているのでしょう。
しかし、後述するさまざまな要因のせいで、せっかくの本筋が台無しにされている、つまり軸が弱体化しているのです。
悪い意味で印象に残りづらい映画といったところでしょうか。
登場人物に感情移入できない
「天気の子」は全体的にキャラ設定が弱すぎます。
例えば帆高ですが、彼の素性は劇中ほとんど明かされることがありませんでした。
上京してきた理由は語られていますが、あまりにも幼稚すぎるし、いきなり身寄りもなく上京してきて衣食住に困るということは容易に想像できるでしょう?
高校1年生なんだからそれぐらいは判断できるはずだよ…
さらにヒロインの陽菜、ぽっと出すぎて感情移入不可能。
彼女は人柱なので親とかいない設定なのでしょうか?
それは設定上仕方ないのでしょうが、それならそれでもう少しバックグラウンドを描いてほしかったですね。
そもそも人柱についての説明がお寺?みたいなところで一瞬語られるに過ぎず、人柱のたどる運命しか明かされないというのは、あまりにもお粗末すぎる気がします。
「君の名は。」は必要なキャラ設定がしっかりとなされていました。
瀧くんは、東京住みなのでほとんどバックグラウンドが語られることはなかったものの、三葉に関してはかなり家の説明がなされていましたよね。
代々ムラの巫女家系であること、それと同時に入れ替わりの家系であること、そして、父、祖母までが登場することで、彼女のバックグラウンドに厚みが感じられました。
瀧くんのバックグラウンドをあまり明かさないのも、対比構造と受け取ればノープロブレムです。
現代社会においては、田舎ほど伝統を重んじ、都会ではほとんど伝統を重んじない。そういった風潮があります。
田舎=糸守町の宮水家においては、代々伝わる伝統がありました。
それに対し、都会=東京の立花家においては、伝統などは一切ありません。
そこを強烈な対比として描いたゆえに、私たちはそのような社会の現状と照らし合わせて親近感を覚えることができたのです。
そしてそれは、「伝統に縛られる三葉」というイメージの完成を意味するので、私たちが容易に感情移入、共感できる要素になりえます。
上でも述べた通り、やはり「天気の子」はそういった設定が弱いですね…
せめて帆高の出身地やら家庭状況ぐらいは明かしても良かったんじゃないでしょうか?
帆高と陽菜を対比に持っていくわけでもなく、かといって強烈なインパクトを持たせるわけでもなく…
ぶっちゃけ扱いがモブ並です。
あと、警察とバトったりとカーチェイスしたり、線路を走ったり、さらには拳銃を発砲したりする要素、いります?
確かに小学生とかが見たら憧れを持つのかもしれませんが、ターゲットは小学生だけではないはず。
少なくとも高校生以上であればそんな行動を見ることはありませんし、憧れることもありません。
「非現実性」というのは映画やアニメならではの要素であり、視聴者をうまく引き込む要素でもあるのですが、今回の映画では完全に非現実の方向を間違えています。
わけの分からないファンタジー要素
上にあげた欠点レベルならまだ長所で補えるのですが、さらにこの作品のイメージを下げてしまう要素があります。
それは「ファンタジー要素」です。
今作のタイトルにもなっている「天気の子」、陽菜は、天気を操れるという超常的存在であり、映画の序盤でそれが明かされたときは、「ちゃんと説明してくれるんだろう」と思っていました。
ですが、上述した通り、全く説明がありません。
なぜ人柱が陽菜である必要があったのか、そして、なぜ雲の上に招かれないといけないのか、さらには雲の上にいるあの水魚たちはなんだったのかなど、考えれば考えるほどわけの分からない要素が出てきます。
言うなれば、「ファンタジーがファンタジーのままで終わってしまった」状態です。
確かに「君の名は。」でも、結局入れ替わりそのものの原理が明かされることはありませんでした。
しかし、「入れ替わり」という現象に紐付けられる説明は多くなされています。
例えば、それは「家系」の要素が強く絡むこと、これがあるだけでも視聴者は納得出来ます。
そして、瀧と三葉、二人の邂逅のシーンは、本当によく練られんだろうなと思います。
伏線としてあった「かたわれ時」、科学的ではないにしろ時間を超えて一瞬だけ巡り会えるという、なんとまあロマンチックな展開に謎の説得性を持たせています。
それに引き換え、あの鳥居をくぐるだけで雲の上に行けるというお粗末設定、説得性がまったく感じられません。
大体東京の廃ビルからファンタジーを感じろと言われても無理がありますよ。
さらに、これはファンタジーに繋がるのかどうか分かりませんが、ラストの東京水没という大災害自体が、少しインパクトに欠ける気がします。
もちろん、現実で台風被害に遭われている方、それによる水没で実際に命を落としている方に対して「水没なんてショボいぜ」とか言いたい訳ではないのであしからず。
あくまで映画として見たときのインパクトです。
東京が水没するとして、そこに私たちが代償性のようなものを感じることは難しいでしょう。
現に水没したあともフェリーやマンションの存在のおかげで人々は生活することが出来ていますし。
「選択の代償」がこの作品のメインテーマであるならば、その代償をもう少し大きなものにしても良かったんじゃないですかね、映像的にも。
「君の名は。」においては、「隕石落下を防がなきゃ!!」という強いインセンティブのもと動いていました。
隕石落下というのは、東日本大震災を想像させるほどの抗いようのない大惨事だからです。大量の死者が出るのですから。
もし動機が「東京水没を防がなきゃ!!」だったら、共感度は半減していたはずです。
そりゃ、現実だったら水没も大惨事ですよ。あくまで映画としてのお話です。
演出、どうかなぁ??
昔から演出に定評のある新海誠作品。
「ほしのこえ」や、「言の葉の庭」、そして「秒速5センチメートル」など、どれも見せ方がとてもうまいです。
「君の名は。」は、そんな過去作の集大成の意味合いを持っていました。
美しい田舎と慌ただしい都会の情景描写、初登場のRADWIMPSの音楽挿入のタイミング、かたわれ時の夕暮れの背景、どこをとっても非の打ち所がない、まさに渾身の一作だ!といった意気を感じました。
もちろん、今回の「天気の子」も、それが十分に活かされていると思います。
ただ、気になる部分がいくつかありました。
まず一つ目は、RADWIMPSの音楽の使い方の荒さ。
「君の名は。」では、4楽曲それぞれが意味を持つベストなタイミングで使用されていましたが、「天気の子」では少し雑に音楽が入っているなという感じでした。
このもやもやは、おそらくストーリーそのものが盛り上がりに欠けるため、音楽で無理に盛り上げようとしてる感がにじみ出ているところから来るのでしょう。
折角RADWIMPSがいい曲作ってるのに勿体ない…
もう一つは、帆高が陽菜を救うため鳥居をくぐったあとのシーンです。
映像作品において、それぞれのシーンの時間帯というのはとても大事です。
例えば、「ソードアート・オンライン」では、浮遊城アインクラッドが崩壊していく様を見つめる二人のバックは、黄金色にそまった夕暮れでした。
「君の名は。」においても、かたわれ時の二人の邂逅シーンのバックは、青紫色に染まった夕暮れでしたよね。
夕暮れの演出は、一日の終わりを無意識に自覚させ、それが「映画ラストへのカウントダウン」の意味合いまでも持つのです。
なので、帆高が陽菜を雲の上で救うシーンの背景は、間違いなく夕暮れがベストマッチなはずです。
なぜこんな私でも思いつくようなポイントを演出班は見逃してしまったのでしょう。
もしあのシーンが夕暮れであればもう少し作品の評価は上がっていたかも…
最後に
ここまで「天気の子」を散々にこきおろしてきましたが、私はもともと新海誠作品が好きです。なので別にアンチというわけではありません。
今回の映画に対して抱いた感想は、期待値を大きくさせすぎ、ただのトレンドムービーでしかなかった、全体的にあと一歩、という三点です。
「君の名は。」の後継ムービーとしてのポジションの期待が高かったため余計に残念でした。ただ、新海誠監督自身も、「賛否が分かれる作品」と言ってるため、そもそも大衆向けではないのでしょうね。
ファンタジー系にしては盛り上がりに欠けるし、恋愛物として見るにしても幼稚感があります。
もう少し「秒速5センチメートル」のような普通の恋愛モノに焦点を絞った方が成功したかな~って思いました。
「じゃあお前に作れんのか!」って言われたらどうしようも無いですけどね!
結論①:「君の名は。」は「天気の子」の10倍面白い!
結論②:2019年最高のオリジナルアニメ映画は「HELLO WORLD」だ!(関係ない)
余談ですが、「HELLO WORLD」は割とマジで面白かったです。「ちゃんと軸を貫いて」いましたしね!
以上、「【面白くない】「天気の子」の面白さは、「君の名は。」の10分の1以下。」でした!
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